関節可動域制限を克服する

スポーツにおける関節可動域制限は多くの場合、靭帯損傷・骨折・肉離れの後遺症など、怪我を契機に発生します。
靭帯損傷の場合、ギプスなどで長期間にわたって関節を固定していると、損傷した靭帯が固くなり伸びの悪い状態で治ってしまうことがあります。

癒着とは、本来独立しているはずの組織がくっついて組織間の滑りが悪くなってしまう現象。

本来なら、怪我をした靭帯が自然に治っていくのに従って、組織に対して伸び縮みさせる力を加えると良いのですが、ギプスを長い期間巻いていると組織の伸び縮みができない状態が続くことで、靭帯が固くなってしまいます。
この伸びの悪い靭帯が関節可動域を制限する原因となることがあります。
また、ギプスの固定によって関節を十分に動かすことができないので、周囲の筋肉も固くなり、筋肉が原因で関節可動域制限が生じることもあります。
大きな怪我をして組織の損傷の程度が高度な場合、怪我が治っていく過程で癒着が起こることがあります。

癒着とは、本来独立しているはずの組織がくっついて組織間の滑りが悪くなってしまう現象ですが、これが生じると関節可動域が低下してしまいます。
関節を構成する骨・軟骨の損傷では、関節面の形状が変わってしまうことで、機械的に関節可動域が制限されることがあります。
時間の面から考えると、受傷後2、3ヶ月までであれば生じた関節可動域制限は可逆的であり、保存的治療で関節可動域を取り戻すことができますが、関節が固まってしまってから1、2年も経ってしまうと、組織自体の性質がかわってしまい、保存的治療が有効でない場合があります。

治りに合わせて少しずつ関節を動かしていく必要がある。

関節可動域を取り戻すための治療を行なっていく上で、何が原因で関節の動きが悪くなっているのかを把握することと共に、時間も重要な要素の1つだといえます。
さまざまな原因で関節可動域制限は生じますが、最も重要なのは発生を予防することです。
予防のためには、ずっと固定を続けるだけではなく、治りに合わせて少しずつ関節を動かしていく必要があります。
そうすることで治ろうとする組織の強度が高くなり、癒着を予防することが可能になるのです。

関節可動域制限から関節可動域を取り戻すことを考えていく上で、まず怪我などで組織が壊れた後、どのようにして治っていくのかをみていきたいと思います。
靭帯でも筋肉でも軟部組織が壊れると、そこから出血します。
この出血が止まって血が固まると損傷した部位に幼弱な修復組織が出現して、そこに未分化な細胞が入り込んできます。
さらにその入り込んできた細胞が組織に見合った細胞に分化して、損傷部位が修復組織で充填されていきます。
最終的には、修復組織が次第に元の組織に近い性質に変わる、リモデリングが行われます。

RICE処置を徹底して初期の炎症がひどくならないようにする。

治療を行っていく上で、まず幼弱な修復組織が出現するまでは患部を動かしてはいけません。
この段階で動かしてしまうと、出血や炎症が強くなり、治りが遅くなってしまいます。
この時期に大切なのは、RICE処置を徹底して初期の炎症がひどくならないようにすることです。
しっかりRICE処置をしておけば、関節可動域制限が生じにくくなり、後々の関節可動域の回復も容易になると考えられています。

組織修復が進み未分化な細胞が組織に合った細胞に分化する頃になると、徐々に可動域を取り戻す訓練を始めます。
組織が治っていく際には適切な力学的負荷がかからないと、組織の修復がうまく進まないことが基礎研究で報告されています。
例えば、靭帯を損傷した関節をギプスなどでずっと固めていると、治りはしますが損傷した靭帯は弱くなってしまうので、治りに合わせて少しずつ関節を動かしていくことが重要になります。
しかし、スポーツ選手などでは、痛みを我慢して過剰に動かしてしまい、靭帯が弱くなり関節弛緩性が出現することがあります。
また、肉離れや関節周囲の大きな怪我の後に過剰に関節を動かしてしまうと骨化性筋炎を起こすこともあるので注意が必要です。

痛みは1つの目安に動き出しを考える。

固定から動かしていくタイミングはとても難しいものですが、痛みは1つの目安になります。
動かしていくときに全く痛みがなくても、痛みが強くてもよくないといえます。
また、圧痛の有無も目安になります。
靭帯の損傷した部分を押さえて痛みがあれば、まだ炎症があり十分に治癒していない証拠なので、当然あまり動かすことはできません。
圧痛がなくなるのは、未分化な細胞が組織に合った細胞に分化している段階以降だと考えられています。
その段階になると、様子を見ながら徐々に動かしていきますが、痛みは非常に個人差の大きいものなので、あくまで目安の1つとして考えた方が良いでしょう。
また、関節が硬くなる傾向にも個人差があり、注意が必要です。
必要に応じて経験のあるスポーツドクターに相談して、患部の状態を確認しながら進めていくのが肝要です。

 

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