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ゴルフと共同筋の動員パターン

ゴルフスイングは全身を連動させて行う複雑な運動であり、効率的なスイングを実現するためには、各筋の適切な協調動作、すなわち「共同筋の動員パターン」が重要になります。人間の身体には同じ関節運動に関与する複数の筋、いわゆる共同筋が存在し、それぞれが役割を分担しながら動作を制御しています。しかし、反復的な動作や姿勢の偏り、筋力のアンバランスが生じると、これらの筋の中で特定の筋が過剰に働き、優位性を持つようになることがあります。これにより動作のパターンそのものが変化し、パフォーマンスの低下や障害のリスクにつながる場合があります。

ゴルフスイングにおいては、体幹、肩甲帯、股関節などの多関節が連動して回旋運動を行います。その際、例えば肩甲骨周囲の筋群、すなわち僧帽筋、肩甲挙筋、前鋸筋、菱形筋などが共同で働き、肩甲骨の位置や安定性を調整しています。しかし、長期間にわたりスイング動作を繰り返す中で、特定の筋に偏った使用が続くと、その筋が他の筋よりも過剰に活動しやすくなります。このようなパターンを「運動の偏り」と呼び、筋活動の非対称性が定着してしまうと、本来果たすべき筋の役割が代償され、筋骨格系全体のバランスが崩れてしまいます。

たとえば、僧帽筋の中でも上部線維は肩甲骨を挙上させる役割を持ちます。ゴルフスイングではフィニッシュやフォローの場面で肩甲骨が挙上方向に引かれやすくなり、このような動作が繰り返されることで僧帽筋上部の優位性が増していくことがあります。その結果、僧帽筋下部の活動が抑制され、肩甲骨を安定させるための下方への牽引力が弱くなり、肩甲帯全体の位置制御が乱れてしまうことがあります。このような状態では、肩甲骨の関節窩が理想的な位置から逸脱し、肩関節のインピンジメントや可動域制限を引き起こす要因となりえます。

このような筋の優位性による偏りは単に筋力を強化するだけでは解決しません。たとえば、僧帽筋下部の筋力を強化するトレーニングを行っても、それが神経系の動員パターンを再構成しない限り、実際のスイング中にその筋が正しく使われるとは限らないのです。筋の収縮能力と実際の運動時の動員とは密接な関連があるものの、神経系の適応がなければ動作の最適化は実現しません。

近年の研究では、筋の選択的動員を促すための「モーターコントロールトレーニング」が注目されています。これは、筋の強化ではなく、神経系による筋の使用順序やタイミング、協調性の再学習を目的としたアプローチです。具体的には、視覚や触覚、固有感覚などの感覚フィードバックを活用し、正しい姿勢や運動パターンを繰り返し体に覚え込ませる方法です。特にゴルフでは、スイング中の姿勢保持や力の伝達において、共同筋の協調が不可欠であり、動作の中でどの筋がどのタイミングで働くべきかを身体に再教育することがパフォーマンス向上には欠かせません。

たとえば、肩甲骨の安定性を高めるトレーニングでは、僧帽筋下部と前鋸筋の同時収縮を促すような運動パターンの再構築が求められます。これは、単純なウエイトトレーニングではなく、四つ這いや立位での腕の挙上動作中に、肩甲骨が挙上せず、胸郭にしっかりと密着しているかを確認しながら実施します。このようなトレーニングは、脳の運動プログラムに正しいパターンを記録させ、競技中にもその動きを再現できるように導くことが目的となります。

結論として、ゴルフスイングにおける共同筋の動員パターンは、単なる筋力の問題ではなく、動作の質や神経系の制御に深く関わっています。特定の筋の過活動や他の筋の抑制は、結果的にスイングの効率性を損ない、障害を引き起こす可能性を高めます。したがって、ゴルフのパフォーマンス向上や障害予防のためには、筋力トレーニングだけでなく、神経筋制御の再教育を重視し、動作全体の中で筋の協調性を再構築する必要があります。動員パターンへのアプローチこそが、真の意味での「正常な運動の再獲得」につながるのです。

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