日々のパフォーマンス改善やコンディショニング管理は「フィジオ」へ。HPはこちら

木下康平プロ 右半身疲労・痛みの謎の解明

右半身ばかりに疲労や痛み、異常な硬さが出るという現象は、偶発的な筋疲労ではなく、現在のスイング構造そのものを反映した結果と考えられます。これまでの動作解析および床反力データを統合すると、右側に過度なストレスが集中する理由は力学的にも神経生理学的にも説明可能です。

まず前提として、ゴルフスイングは本来「左右分業型」の運動です。P2からP4にかけては右脚が回旋軸として機能し、骨盤回旋を受け止めながらエネルギーを蓄積します。そしてP4以降、切り返しでは右側で溜めたエネルギーが解放され、左脚がそれを受け止めることで骨盤が効率的に開きます。右は「溜める側」、左は「受け止める側」という役割分担が成立して初めて、回旋エネルギーは全身で循環します。

しかし現在のスイングでは、この分業が崩れています。骨盤回旋量が十分でないまま胸郭が先行し、切り返しでも左脚への力の移行が不十分なため、右脚が推進・支持・ブレーキという三役を同時に担っています。床反力データで右脚の推進力が大きく、左脚での反力が小さいという結果は、この力の偏在を裏付けています。本来P5以降で右から左へと水平成分が移行するはずが、右側にエネルギーが滞留し続けているのです。

右脚が過剰に働くと、股関節外旋筋群や内転筋群が常に高い張力を発揮する状態になります。震えが生じるということは、神経系が過剰発火している証拠です。過活動が持続すると、筋内血流は低下し、代謝産物が蓄積しやすくなります。その結果、筋硬結や異常な硬さ、局所的な疼痛として知覚されます。特に右内転筋、大臀筋上部線維、腰方形筋、右側広背筋は、現在の回旋戦略では過負荷になりやすい部位です。

また、股関節で処理すべき回旋トルクが十分に制御されない場合、力は膝内側、仙腸関節、腰椎へと伝達されます。右膝内側の違和感や、右腰部の張りが出やすいのはこのためです。股関節が回旋軸として機能しないと、関節間の力学的分担が崩れ、末梢や体幹部に剪断ストレスが集中します。これは典型的な「片側回旋依存型」の運動パターンです。

さらに重要なのは、右側の過負荷が単なる出力過多ではなく、「出力の逃げ場がない」ことに起因している点です。本来エネルギーは右で作られ、左で吸収されます。しかし左脚の外旋トルク発揮や受け止め能力が不足している場合、右で生じたエネルギーは行き場を失い、右側で消費され続けます。アクセルを踏み続けながらブレーキが機能しない車のような状態で、エンジンに相当する右半身が疲労するのは当然です。

後方動画では震えが比較的少なかったことから、構造的な障害よりも運動プログラムの選択が影響している可能性も示唆されます。ボールが入ることで無意識に上半身主導の速い回旋戦略へ切り替わり、右側で一気に出力を上げるパターンが強化されていると考えられます。これは中枢神経系の予測制御の問題であり、「強く振る」ことを優先するあまり、力の受け渡しが分断されている状態です。

まとめると、右半身ばかりに疲労や痛みが出る理由は、①右脚が回旋軸・推進脚・ブレーキを同時に担っていること、②左脚への力の移行が不足していること、③股関節外旋トルクの保持が不十分で膝や体幹にストレスが転嫁されていること、④神経系の過活動が持続していることにあります。これは右が強いのではなく、左が機能していない構造とも言えます。

この状態を放置すると、慢性的な筋硬結や関節ストレスにつながる可能性があります。しかし同時に、回旋戦略を再設計すれば、負荷分散と効率向上が同時に得られる可能性もあります。右半身の過緊張は単なる疲労ではなく、身体が発している明確なフィードバックです。その意味を正しく理解することが、改善への第一歩となります。

関連記事

RETURN TOP