P7をどう扱うかは、スイング評価の哲学そのものを決めます。結論から言えば、P7は「直す局面」ではなく「評価点」であり、上流で起きた運動制御の総決算として現れる結果指標です。ここを修正対象として扱うと、練習はほぼ必然的に迷走します。なぜなら、インパクトは“意識で操作できる時間”の外側にあるからです。
まず時間領域の話をします。インパクト近傍で起きるクラブと身体の相互作用は極端に短く、意識的な運動指令を挟む余地がありません。視覚情報の処理、意思決定、運動指令の生成と伝達、筋収縮の立ち上がりまでを合わせれば、インパクト直前で「手を返そう」「当てにいこう」と思った時点で遅いのです。むしろ意識的介入は、既に形成されている運動連鎖を乱し、予測制御(フィードフォワード)で維持されていたタイミング構造を破壊しがちです。だからP7は、狙って作る“瞬間の形”ではなく、P1〜P6で作られた運動の必然として現れる“結果の相”になります。

この理解に立つと、P7評価の意味が変わります。P7は「良い/悪い」の判定ではなく、「どこが上流で崩れたか」を逆算するための診断ツールです。バイオメカニクスの言葉で言えば、P7で観察される現象は、運動連鎖の位相(タイミング)、角運動量の受け渡し効率、床反力の方向づけ、関節剛性の設定、そしてクラブの慣性特性との適合の“合成出力”です。合成出力を直接いじるのではなく、合成に寄与した因子を同定して再設計する。ここにP10システムの実用的な強さがあります。
では、P7で何を評価しているのか。多くの評価項目は、(1)ボディ側の状態、(2)クラブ側の状態、(3)両者の結合(インパクトロフト、パス、フェース、入射、最下点)の三層に分解できます。たとえば「体が起きる」「手元が浮く」「フェースが開閉する」といった見えやすい現象は、末端の“症状”に過ぎません。症状を発生させるメカニズムは、より上流の運動学と神経筋制御に埋まっています。
典型例として、P7でフェースが開き、当たり負けする、あるいはプッシュが増えるケースを考えます。ここで「インパクトでフェースを返す」を処方すると、前腕回内外や手関節運動を増やして帳尻を合わせにいき、再現性は落ちます。逆算すべきは、まずP6時点での“手元とクラブの相対関係”です。いわゆるlag保持が不十分なら、手元の加速とクラブヘッドの遅れ(角度保持)が作れず、リリースが早まり、フェース管理は末端依存になります。さらに、そのlagがなぜ保持できないかを掘ると、P5〜P6で骨盤→胸郭→上肢の順序が崩れている、あるいは床反力の使い方が「回転を生む方向」ではなく「伸び上がり方向」に寄っている、という原因に行き当たります。つまりP7のフェース問題は、P6のクラブ状態であり、さらにその前の運動連鎖の秩序の問題である、という読み替えが必要です。
別の例として、ダフリや最下点が手前になるP7を見ます。観察上は「右に残る」「上体が突っ込む」「手首がほどける」など複数のラベルが貼れますが、診断はラベルではなく因果で行います。重心や圧中心が適切に左へ移行していない場合、クラブの円弧の中心が右に残り、最下点は前に出にくい。加えてP6で早期リリースが起きれば、クラブの半径が早く最大化し、円弧は低くなり、地面に先に当たりやすい。ここで重要なのは、P7で「当て方」を変えるのではなく、P2〜P4で位置エネルギー(捻転差や張力、支持脚の受け)を貯め、P5でそれを適切な順番で解放し、P6でリリースを“遅らせる”のではなく“必要な瞬間に起こるように準備する”ことです。遅らせる意識ではなく、遅れが生まれる構造を作る、という発想です。
この「準備」という言葉は、最新の運動学習研究の文脈とも相性が良いです。熟練者ほど動作中に修正指令を多発させているのではなく、事前に環境・身体・道具の条件を整え、予測制御で結果を安定させます。ゴルフは外乱が少ない閉鎖技能に見えますが、クラブという長い剛体系を高速回転させる以上、微小なズレが大きな誤差に増幅されます。だからこそ、インパクトの0点何秒に“賭ける”より、P1〜P6で誤差感度を下げる設計が合理的になります。

P7を診断ツールとして運用する際、実務上のコツがあります。それは、P7の評価項目を「原因推定の分岐点」として扱うことです。たとえば、(A)打点が安定しないのか、(B)球筋が散るのか、(C)飛距離効率が落ちるのか。打点が乱れるなら最下点と半径管理、球筋が散るならフェースとパスの相対、効率が落ちるなら動的ロフトと入射と芯、というふうに、P7の観察を“物理量のどれが揺れているか”へ翻訳します。そして、その物理量が揺れる上流要因をP6→P5→P4…と遡ります。ここでP10の価値が出ます。P7は結果、P6はクラブと手元の関係、P5は運動連鎖の開始順序、P4はトップの蓄積、P2〜P3は荷重と分離、P1はセットアップ。因果が一本の線としてつながり、修正は必ず“時間が長く、介入可能な局面”に配置されます。
最後に、P7を「評価点」として徹底することの副作用も正直に述べます。短期的には、目の前のミス球に対して“当て方の工夫”で乗り切る誘惑が強くなります。しかし、その誘惑を断ち、P7を冷静に観察して上流へ遡る習慣が身につくと、スイングは一気に工学的になります。自分の感覚を信じるのではなく、結果から原因を推定し、原因を操作して結果を変える。P7はその入口であり、インパクトという神秘を、再現可能な診断学へ変えるための観測点です。P7を直そうとしない。P7で“どこを直すべきか”を決める。この姿勢こそが、P10システムのP7を機能させる中核だと考えます。