ゴルフスイングにおけるP10システムのP3局面は、単なるクラブの通過点ではなく、その後のスイング全体を支配する極めて重要な神経・運動学的イベントです。P3とは、バックスイング初期から中盤にかけてシャフトが地面とほぼ平行となる局面を指し、この時点で形成されるシャフトプレーンは、クラブヘッド軌道を規定する仮想的な基準面として機能します。このプレーンが適切に確立されるかどうかは、インパクトに至るまでの再現性、エネルギー伝達効率、さらには障害発生リスクにも直結します。
バイオメカニクスの観点から見ると、P3では上肢と体幹の相対運動、特に肩甲帯と胸郭の協調が重要な意味を持ちます。熟練者のスイングでは、肩関節の外旋と前腕回外が過度に先行することなく、体幹回旋に同期してシャフトがプレーン上に「乗る」ように誘導されます。このとき、クラブの慣性モーメントは急激な角加速度を生まず、結果としてシャフトは安定した平面内運動を示します。運動学的には、これは余剰自由度の凍結ではなく、適切な自由度の協調によって達成される状態であり、ベルンシュタインの運動制御理論とも整合的です。

神経科学的に見ると、P3でのシャフトプレーン確立は中枢神経系における内部モデルの形成と更新を強く反映します。内部モデルとは、運動指令とその結果として生じる感覚フィードバックとの対応関係を脳内で予測的に構築する仕組みであり、特に小脳が中心的役割を果たすことが知られています。ゴルフスイングのような高速かつ反復性の高い運動では、フィードバック制御のみでは時間的遅延が大きく、正確な軌道修正が困難です。そのため熟練者ほど、P3以前の段階でプレーンを予測的に設定し、フィードフォワード制御によってクラブ軌道を安定化させています。
この予測制御を支えるのが、固有受容感覚と前庭系による空間認識です。筋紡錘や関節受容器から得られる情報は、上腕・前腕・体幹の相対位置や運動速度を中枢へ伝え、シャフトが現在どのプレーン上に存在しているかを高精度に把握する手がかりとなります。加えて前庭系は、頭部と重力方向との関係を基準として全身の姿勢安定性を担保し、スイング中の身体座標系を一貫させる役割を果たします。P3でシャフトが過度にインサイドやアウトサイドへ逸脱する選手では、これら感覚情報の統合が不十分で、空間的内部表象が不安定である可能性が示唆されます。

筋電図研究においても、熟練ゴルファーはP3局面での筋活動が極めて秩序立っていることが報告されています。特に広背筋、前鋸筋、腹斜筋群など体幹と肩甲帯を連結する筋群が、過剰な共同収縮を起こすことなく、タイミング良く活動します。これはスイングプレーンを意識的に「合わせにいく」動作ではなく、事前に最適化された運動プログラムが自動的に実行されている状態を示しています。一方、未熟練者ではP3において筋活動のばらつきが大きく、感覚フィードバックに依存した遅れた修正が生じやすいことが確認されています。
以上を総合すると、P10システムにおけるP3局面は、シャフトプレーンという幾何学的概念を超え、神経制御とバイオメカニクスが交差する中核的フェーズであると言えます。この段階で適切なプレーンが確立されることは、小脳を中心とした内部モデルが正しく機能している証であり、以降のダウンスイングやインパクトを「結果として」安定させます。P3を修正することは、単なるフォーム矯正ではなく、運動学習そのものに介入する行為であり、感覚入力・姿勢制御・筋協調を含めた包括的なアプローチが求められる理由もここにあります。