P10システムのP4は、単なる「トップの形」ではありません。ここでシャフトがクロス(ターゲットラインより奥に倒れ込む)なのか、レイドオフ(ラインより手前に寝る)のかは、切り返し直後に身体が支払う“運動学的コスト”をほぼ決めてしまいます。なぜならP4は、胸郭・肩甲帯・上腕骨・前腕・手関節という多関節連鎖が「次に何をしなければならないか」を、幾何学的に予約してしまう地点だからです。あなたが提示した通り、クロスではダウンスイングで外旋筋群(棘下筋・小円筋)に強い収縮が要求されやすく、レイドオフでは前腕回内筋群の早期動員とタイミング制御が難しくなります。ここをP10の言葉に翻訳すると、「P4の向きがP5以降の“補正仕事”を増やし、P6〜P7の自由度を奪う」という話になります。
まずクロスの本質は、シャフトが“背中側”へ倒れることで、クラブの慣性主軸が身体の回転面から外れやすい点にあります。切り返しで下半身が先行し、胸郭が遅れ、腕が落ちる——この典型的な順序自体は正しいのですが、クロスが強いとクラブは「外側・上側」に居座りやすく、腕を落とすだけではプレーンに戻りません。そこで身体は、上腕骨頭を外旋させて前腕・クラブを“内側に折り畳む”方向へ誘導する必要が出てきます。この外旋は、単に見た目の“肘を絞る”動きではなく、肩関節の軸周りにトルクを発生させ、クラブの角運動量ベクトルの向きを修正する作業です。つまりクロスほど、回転でクラブを運ぶのではなく「肩でクラブの向きを直す」局面が増えます。ここで外旋筋群が働くのは、上腕骨頭を後方に安定させながら外旋トルクを出し、上腕骨の前方滑りやインピンジメント的ストレスを抑えつつ、クラブの“過剰な外側化”を回収するためです。結果として、エネルギー消費が増えるだけでなく、筋の出力タイミングが少しズレた瞬間に、フェースの開閉と軌道の両方が同時に荒れます。クロスの人が「今日は当たるけど、翌日は急に右へ抜ける」「腕が疲れると急にプッシュスライスが増える」と言うのは、まさにこの“補正仕事”がコンディション依存になりやすいからです。

さらに厄介なのは、クロスが外旋筋群に要求するのが“最大筋力”というより“高い再現性の等尺〜短縮制御”だという点です。ダウンスイング前半では、上腕は外転・水平内転・内旋/外旋が同時に進み、肩甲骨も後傾・上方回旋・外旋が重なります。この中で外旋筋が「回しすぎず、回さなさすぎず」をやるのは、いわば細い針穴に糸を通す作業です。しかも外旋筋は、クラブの慣性で“内旋方向に持っていかれる”状況を受け止めながら、必要な分だけ外旋を作ります。だからクロスが強いほど、P4からP5のわずかな時間帯で、外旋筋群に高い出力と高い精度が同時に求められ、失敗するとクラブは一気にアウトサイドへ逃げ、フェースも開きやすい。ここが、クロス=「下ろし方の自由度が減る」という運動学的な帰結です。
一方でレイドオフは、真逆の意味で“前借り”が起こります。P4でシャフトが寝てラインより手前にあると、クラブは身体の回転面に乗りやすく見えますし、見た目には「浅くて良いトップ」に映ることも多い。しかし運動制御の観点では、レイドオフが強いほど、切り返しでクラブが“内側に入りやすい”ぶん、フェース管理を前腕で早めに始めないと、クラブが過度にシャロー化し、インサイドから入りすぎたり、フェースが過度に閉じたりします。そこで必要になるのが、前腕回内筋群の早期活性化です。回内は、クラブフェースの向きを決める主要因の一つですが、P4直後からこれを前倒しで使うということは、回転・腕の落下・手首の橈屈/尺屈といった他の要素と“位相合わせ”をよりシビアにすることを意味します。レイドオフが強い人ほど「タイミングが合う日は強いドロー、合わない日は引っかけかプッシュ」という振れ幅になりやすいのは、回内の開始時刻と量が、スイング全体の協調に直結しているからです。
ここで重要なのは、回内が悪者なのではなく、回内を“早く使わされる構造”が問題だという点です。P10で言えば、P4がレイドオフ過多だとP5でクラブが早く内側へ落ち、P6での「クラブが自分の前にある」条件を作りにくくなります。すると、インパクト直前に辻褄を合わせるために、手元の減速や手首のリリースを早める、いわゆる“当てに行く制御”が増えます。これはヘッドの加速が最大化する区間を短くし、ミート率だけでなく再現性も落とします。しかも前腕回内筋群は、疲労や前腕の張り、握力の入り方に影響されやすい。だからレイドオフ過多は、テクニックの問題に見えて、実は「神経筋制御の難易度を上げている」状態になりがちです。

では、P4でクロス/レイドオフをどう捉えるべきか。私は「形の是正」より先に、「どの筋群に、どの局面で、どれだけの補正仕事を強いているか」という視点を勧めます。クロスの場合、外旋筋群に補正を任せるほど、胸郭回旋と肩甲骨の適切な上方回旋・後傾が不足している可能性があります。つまり“肩で直す”前に、“体幹と肩甲帯でクラブが戻る環境”を整える方が合理的です。レイドオフの場合、前腕回内を早めに入れないと成立しないなら、P4での手元位置と手首の橈屈/背屈バランス、あるいはクラブの重心・慣性(シャフトやヘッド特性)が、回内前倒しを誘発していることもあります。クラブが違えば同じP4でも必要な制御は変わりますし、身体側も可動性や筋出力だけでなく、固有感覚の精度によって“やりやすい解”が変わります。
結局、P4のクロス/レイドオフがもたらす運動学的帰結は、「下ろす局面で、どの修正を強制されるか」に尽きます。クロスは外旋トルクを必要として補正仕事が増え、疲労や日内変動で再現性が揺れやすい。レイドオフは回内制御を前借りし、タイミングの位相合わせが難しくなる。P10のP4を“写真の美しさ”で語ると迷子になりますが、“補正仕事の最小化”として捉えると答えが出やすい。あなたのスイングが目指すべきP4は、理想形のテンプレートではなく、P5以降で余計な筋活動を増やさずに、クラブが自然にP6へ合流できる「制御しやすい初期条件」なのです。