P10システムでスイングを評価するとき、現場で最も多い落とし穴は「インパクトの見た目」を起点に原因探しを始めてしまうことです。たとえば、フェースが開いた、ダフった、プッシュした、捕まらない。こうした“結果”は目立つので、ついP7(インパクト)から直したくなります。しかし実際には、インパクトの形は上流の構造とタイミングの“合成結果”にすぎません。近年の3Dモーション解析や力学計測を用いた海外研究でも、クラブ挙動やフェース角の変化は、直前の手元の経路だけでなく、骨盤・胸郭の回旋タイミング、地面反力の出し方、前腕の回内外が連鎖して決まることが繰り返し示されています。つまり、P10評価の精度は「上流→下流」の因果を見抜けるかで決まります。
まずP1(姿勢・構造)でよく起こるエラーは、“動けない身体で動こうとする”状態です。骨盤が後傾し、胸郭が落ち、首がすくんだ構えは、一見リラックスして見えても、回旋の可動域と荷重移動の余白を先に使い切ってしまいます。するとトップで詰まり、切り返しで逃げ道を作るために手元が浮く、クラブが寝る、あるいは逆に上から叩きにいく。P7でフェースを返しても、根本の“器”が小さいままなので、再現性が上がりません。P1は静止画の美しさではなく、「回れる・乗れる・戻れる」構造かどうかです。足部から骨盤、胸郭、頸部までの積み木が少し崩れるだけで、下流の補正運動が増え、P10上の“エラーっぽさ”が増幅します。

次にP2(始動)では、評価の誤読が頻発します。多くの人が“テークバックがインサイド”や“アウト”と形で断罪しますが、問題は方向ではなく、始動で何を動かしているかです。上半身だけでクラブを引くと、胸郭の回旋より先に腕が動き、手元が早く深く入りやすくなります。逆に下半身を止めて上だけ回すと、骨盤が遅れ、捻転差が作れず、トップで一気に腕で帳尻を合わせる。どちらもP4以降の渋滞を呼びます。ここで重要なのは、P2は“加速区間の設計”の始まりだという視点です。始動で力みが出ると、速度ピークが早まり、切り返し以降でクラブの慣性に負けやすくなります。P10評価では、P2の微細なズレがP6のクラブ位置に一番強く出ます。
P4(トップ)で多いのは、「トップの形を作りにいく」エラーです。肩を回したい一心で左肩を顎の下に押し込む、手元を高く上げる、シャフトを“オンプレーン”に見せる。こうした意図的な矯正は、胸郭の伸展や側屈を硬くし、結果として切り返しのスペースを消します。近年の計測研究では、上手い人ほどトップで“静止”しているのではなく、重心・圧中心の移り変わりが滑らかで、胸郭と骨盤の相対運動が破綻しにくいことが示唆されています。トップはポーズではなく、切り返しへ向けた「余白の確保」です。ここが理解できると、トップで手元が深いか浅いかよりも、「次に落とせるか」「回せるか」を見て判断できるようになります。
P5(切り返し)はP10評価の心臓部ですが、最も誤解されるポイントでもあります。よくあるエラーは二つで、ひとつは“下半身リード”をやり過ぎて骨盤だけが先に開くタイプ、もうひとつは“間”を作ろうとして止まり過ぎるタイプです。前者は胸郭が追いつかず、手元が体から離れやすく、アウトサイドから入りやすい。後者はクラブが落ちる前に回転を止めてしまい、インパクトで手先のリリースに依存します。切り返しの本質は、回転を止めることでも、無理に開くことでもなく、地面反力と回旋のタイミングでクラブの慣性を“正しい落下”に乗せることです。P10のチェックでは、切り返しで圧中心がどこへ移り、胸郭の回旋がいつ再加速するかを見てください。ここが整うと、P6の見た目が勝手に良くなります。
P6(クラブ位置)で多いのは、「クラブ位置を直そうとしてクラブ位置が悪化する」現象です。たとえば“寝ているから立てる”で手元を外へ押す、“上から入り過ぎるから浅く”で手元を背中側へ引く。これらはP5までの運動連鎖が崩れているのに、末端だけを操作する典型です。P6は結果の見えやすい地点なので修正欲が刺激されますが、評価としては“上流のエラーの指紋”が残る場所だと捉えるべきです。クラブが寝るなら、胸郭の回旋が遅れているのか、前腕の回内外が早いのか、あるいはP1の前傾が保てずスペースが潰れているのか。原因は必ず複数候補になります。その候補をP1〜P5へ遡って消去できるのが、P10評価の強さです。

最後のP7(インパクト)は、直す地点というより“検査結果”です。フェースが開く、ロフトが増える、手元が浮く、体が突っ込む。これらはP1〜P6のどこかで起きた不足を埋めるための代償運動として現れます。だからこそ、インパクトから原因を探すのは逆効果になりやすいのです。P7で何かをいじるほど、代償が別の代償を呼び、スイングは複雑になります。P7は「狙った運動ができたか」を確認し、次の練習設計の評価指標にする。これが一番、遠回りに見えて近道です。
P10システムの価値は、フォームを型にはめることではなく、上流の構造とタイミングを整えて、下流のクラブ挙動を“自然に”揃えることにあります。P1で動ける器を作り、P2で加速計画を整え、P4で余白を確保し、P5で慣性を味方につけ、P6で指紋を読み取り、P7で検査をする。この順番を守るだけで、同じエラーでも修正の成功率が一段上がります。スイングは部分の寄せ集めではなく、連鎖の設計図です。P10評価は、その設計図を上流から読み解くための言語だと考えてください。