P10システムでいうP7は、インパクトそのものというより「インパクトが成立する直前〜直後」を含む“リリース窓”として捉えるほうが評価精度が上がります。ここで求められるのは、単にグリップがヘッドより前にあるという静的な形ではなく、動的条件の同時成立です。すなわち、(1)クラブの角運動量が最大化される局面で、(2)フェース向きの分散を抑えつつ、(3)ロフトと入射条件を狙い通りに固定する。その結果として「ハンドファーストが見える」のであって、ハンドファーストを作ろうとして手元だけを前に残すのは多くの場合、別の破綻(スタックや引っかけ、スピン過多、薄い当たり)を招きます。P7評価は、この因果を逆転させないことが核心になります。
まず解剖学的に整理すると、インパクト近傍の“手関節”は、単関節的に掌屈/背屈の角度を作っているのではなく、前腕回内外と手関節橈尺屈を含む複合回旋の中で、結果として掌屈方向のモーメントを表出します。左手(リード手)で言えば、回内の主役は円回内筋と方形回内筋で、ここに橈側手根屈筋・尺側手根屈筋、さらに指屈筋群が加わり、グリップ圧と掌屈モーメントを“必要なだけ”供給します。重要なのは「必要なだけ」という点で、P7は筋力自慢の区間ではなく、時間精度の区間です。クラブヘッドは最大速度域へ入り、わずかな筋活動の過不足がフェース角と動的ロフトを大きく揺らすので、筋の役割は加速よりも“拘束条件の設定”に寄ります。言い換えると、P7の手首と前腕はエンジンではなく、出力の通り道に設置された可変ダンパーとして働きます。

この「可変ダンパー」を成立させる神経筋の鍵が、相反抑制と共収縮の切り替えです。あなたが書かれている通り、P6でのlag保持からP7でのreleaseへの移行は、伸筋群と屈筋群が単純に交代するのではなく、同時に働く比率が変わる現象として現れます。トップ〜ダウンスイング前半では、過度な手首の掌屈・尺屈が起きないよう伸筋群のトーヌスが残り、いわば“ブレーキ付きの加速”になります。ところがP7に近づくと、クラブの慣性が手関節に作る外力(背屈方向の外力や回旋モーメント)を利用するために、伸筋のブレーキは完全には抜かれず、しかし主導権は屈筋群と前腕回内群に移っていく。この「抜きすぎない」ブレーキが、キャスティング(早すぎる解放)を防ぎ、同時に「残しすぎない」ことがスタック(遅すぎる解放)を防ぎます。P7の巧さは、筋のオン・オフではなく“ゲイン調整”の巧さとして観察されるべきです。
P10のP7評価に落とすと、ハンドファーストは「リード手首の掌屈角度」だけで点数を付けると破綻します。なぜなら、掌屈角度が似ていても、前腕回内の位相、グリップ圧の立ち上がり、橈尺屈の混ざり方、そして上流(骨盤〜胸郭〜上肢)の回転減速のタイミングが違えば、フェースの時間変化が別物になるからです。P7の評価軸は、①リード手首の角度そのものより、角度が“どれだけ安定しているか”、②安定の代償としてクラブ軌道が詰まっていないか、③フェースローテーションが「回内主導でなめらか」か「手首のこじりで急峻」か、の三つで見たほうが臨床的に当たりやすい。前腕回内が主導のローテーションは、関節構造的に比較的再現性が高く、筋活動も過大になりにくい。一方、手首の単独操作(背屈から掌屈への“叩きつけ”や尺屈の急増)でフェースを合わせると、P7の時間窓で誤差が指数的に増えます。ここが「ハンドファーストを作ろうとして逆に不安定になる」典型です。
ではP6→P7の移行は、なぜ“時間精度”が支配的になるのでしょうか。生体側の理由は、遠位部の自由度が多く、感覚入力の遅れ(末梢固有感覚の伝達遅延)を抱えたまま高速運動を制御しなければならないからです。高速局面ではフィードバック制御より、事前に組まれた運動プログラム(フィードフォワード)と、外乱に対して形を崩さない剛性設計(共収縮)が要になります。つまりP7の上手さは、当てにいく視覚主導ではなく、P6までに作った運動連鎖とクラブ挙動の予測に基づく“先回りの固定”で決まります。見た目としては、インパクト直前に手元が何かをしているように見えても、実際は「何かをした」というより「余計なことが起きないように先に固定した」結果になりやすい。ここを理解すると、P7の指導言語が変わります。「もっとハンドファースト」ではなく、「P7で手首を動かすな」でもなく、「P6までに作ったクラブの遅れを、P7では崩さない剛性で通す」に近い表現が、再現性を上げます。

評価上の落とし穴として、P7のハンドファーストを“ロフトを立てる技術”とだけ定義すると、クラブが寝て入ってくる問題(シャフトプレーン逸脱)や、体幹の回旋が止まって腕が追い越す問題(運動連鎖の断裂)を見逃します。P7でロフトが立って見えても、実際は上流が失速し、手首の掌屈と回内で無理に帳尻を合わせているケースがあり、このタイプはフェース管理が非常に繊細で、日替わりになりやすい。逆に、上流の減速が適切で、相互作用トルクが前腕〜手関節へ“自然に”流れている場合、ハンドファーストは派手に見えなくても、インパクト条件が強く安定します。P10のP7は「見た目の先行量」より、「先行が生まれる力学と神経制御が破綻していないか」を採点する段階に入っていると捉えるべきです。
P7におけるハンドファーストとは、回内と掌屈を“起こす”ことではなく、回内と掌屈が“起きても破綻しない条件”をP6までに整え、P7ではその条件を崩さず通過することです。円回内筋・方形回内筋、手根屈筋群、伸筋群の相反抑制と共収縮は、その通過を可能にする微細なゲイン制御であり、P7の成否は筋力ではなく時間と安定性で決まります。P10評価としては、ハンドファーストを単独の形状指標にせず、フェース角の時間変化、動的ロフトの安定、そして上流の運動連鎖がP7で“手に仕事を押し付けていないか”という因果で読む。ここまで踏み込むと、P7は「当てる瞬間」ではなく、「当たる条件が崩れない瞬間」として、より科学的に扱えるようになります。