P7は、スイングの結果がすべて数値として確定する瞬間です。クラブヘッドスピードや入射角、フェース向きといった表層の事実に加えて、ボール初期条件を支配する“見えない変数”がここで一斉に顕在化します。その代表がダイナミックロフトです。静的ロフトがクラブの設計値だとすれば、ダイナミックロフトはインパクト直前の運動学と荷重状態が作る実効値であり、打ち出し角とスピン量、ひいては飛距離効率を決めます。P7を評価するとは、フォームの良し悪しを語ることではなく、「どの力学が、どのロフトを生んだのか」を同定する作業だと捉えるべきです。
ご提示の通り、静的ロフトとの差を作る主因は概ね三つに整理できます。第一にシャフトのしなり戻り(動的な復元と先端の追い越し)、第二に手関節角度と前腕回旋が作る実質的なフェース姿勢、第三に攻撃角度(AoA)とそれに付随するインパクトの接触幾何です。P7ではこの三者が「独立して足し算」されるのではなく、相互に拘束し合いながら一つの解に収束します。たとえばハンドファーストを強めるとロフトは立ちますが、同時にハンドパスの位置関係が変わり、シャフトの復元挙動やフェースの回転速度(closure rate)まで動いてしまう。P7のロフト問題は、手首だけを見て解けるほど局所的ではありません。

7番アイアンで静的ロフト30度に対してダイナミックロフト25〜28度というレンジは、現場感覚としてとても妥当です。ただし「理想」はプレーヤーのヘッドスピードや打点位置、意図する弾道(スピンで止めるのか、前に強く飛ばすのか)で変わります。P7で本質的に見たいのは、ダイナミックロフトの“値”そのものよりも、その値が再現性高く出ているか、そしてAoA・フェース向き・打点の組み合わせとして整合しているかです。ダイナミックロフトが適正でも、AoAが緩すぎてスピンロフト(dynamic loft − AoA)が過大ならスピンは増えやすく、逆にロフトを立てすぎてスピンロフトが小さくなると球は強くても止まらない。P7は「ロフト単体」ではなく「スピンロフトの設計点」を読む局面です。
手関節と前腕の役割をP7の評価言語に翻訳すると、鍵は二つになります。ひとつはリード手首(多くは左手首)の屈曲・伸展の状態、もうひとつは前腕回内外と上腕の内外旋が作るフェース姿勢です。ハンドファーストが適切で、インパクト近傍で軽度の掌屈(いわゆるフラット〜ややボウ)を保てると、フェースは過度に寝ず、ロフトは自然に締まります。ここで重要なのは「掌屈すること」自体ではなく、「掌屈を保てる条件が揃っていること」です。条件とは、体幹回旋と骨盤回旋の減速・加速のリレーが成立し、ハンドパスがボールより前で安定し、クラブが“外から下りてこない”ことです。つまりP6からP7にかけての運動連鎖が正しければ、手首は結果として望ましい角度に落ち着きます。逆にP6でlag解放が早いと、クラブの遠心的な張力が手関節を背屈方向へ引き込みやすく、フェースは寝てダイナミックロフトが増えます。このとき多くの選手は「当てにいく」補正として、さらに手元を止めたり上体を起こしたりしてAoAまで緩ませ、スピンロフトを二重に増やしてしまいます。P7のロフト過大は、実はP6以前のシーケンス破綻がP7で“数字になっただけ”というケースが少なくありません。
一方で、過度なハンドファーストも万能薬ではありません。グリップが過剰に先行すると、ロフトが立つだけでなく、打点が下にズレてフェース下部ヒットになりやすい。フェース下部はギア効果と打出し・スピンの関係が崩れやすく、スピン不足や打ち出し不足、キャリー不足として現れます。さらにハンドファーストを作るために上体を突っ込み、胸郭の前傾が抜けてしまうと、入射角が急になりすぎて地面反力の方向が変質し、インパクトでのロフトは立っているのに“刺さる球”になる。P7では「ロフトが立った」事実よりも、「それが体幹と下肢の力発揮の結果として起きたのか、それとも上肢で無理に作ったのか」を区別する必要があります。前者は再現性と伸びしろがあり、後者は当たる日の幅が狭く、疲労や緊張で崩れます。
シャフトのしなり戻りは、P7のダイナミックロフトに静かに、しかし確実に効きます。一般にプレーヤーは“しなり”を意識して操作できませんが、P6〜P7のハンドスピード、リリースの位相、クラブのトルク負荷がシャフトの復元を決めます。しなり戻りが強いとロフトは増えやすい、という単純化は危険で、実際にはフェース角・ライ角・打点の変位も同時に起きます。だからP7評価では「ダイナミックロフトが増えた」時に、手首が背屈しているのか、シャフトのキックが強いのか、AoAが緩んでスピンロフトが増えたのか、そして打点がどこにあるのかをセットで読みます。P10のP7は“結果のページ”なので、原因を一つに決め打ちすると評価が外れます。研究的に言えば、同じ弾道でも内部自由度は複数あり得るため、観測変数の同定には多点情報が要る、ということです。

では、P7をどう「良い状態」と定義するか。私はダイナミックロフトを、単なる角度ではなく“インパクトの拘束条件の整合性指標”として扱います。具体的には、ハンドパスが安定して前にあり、リード手首が過度に背屈へ逃げず、前腕回旋がフェースを閉じすぎない範囲で収まり、AoAが意図したレンジに入っていること。これらが揃うと、ダイナミックロフトは適正範囲に自然収束し、打ち出しとスピンの関係が安定します。逆にどれかが欠けると、ロフトは日替わりで上下し、球質は散ります。P7は「当てた瞬間」ですが、評価としては「当てにいった痕跡」が残りやすい場所でもあります。だからこそ、P7でロフトを語るときは、P6以前のシーケンスと、P7直前の手首・前腕・シャフトの状態、そしてAoAと打点を一つの因果鎖として結ぶ必要があるのです。
結局、P7のダイナミックロフトは“手先の技術”というより、全身の運動連鎖が作った最終出力です。ロフトを適正化したいなら、P7で角度を直すより、P6〜P7で背屈へ逃げないだけのハンドパスと体幹回旋、そして適切な地面反力の使い方を先に整える方が、再現性もパフォーマンスも上がります。P10のP7評価は、その設計が成功しているかを数値と現象で確認する場であり、ダイナミックロフトはその最も鋭敏な“答え合わせ”の一つだと言えます。