ゴルフにおける身体知構造を考えるとき、自己の体部位再現は非常に大事です。

ペンフィールドが証明した大脳皮質における体部位再現性は、大脳皮質に身体が正確にマップされていることを示したものになります。

しかし、これ以前に、イギリスの神経学者であるHeadとHolmesが身体図式(ボディスキーマ)という概念を提唱しています。

これは平衡感覚、体性感覚系、視覚・聴覚などの信号は、姿勢や上下肢の位置を時々刻々と脳に刻んでおり、脳の中では身体が体表モデルと連携して内的姿勢モデルとして構成されるという考え方です。

ボディスキーマを考える

このボディスキーマを考える時、特に筋骨格系の動的信号を伝える固有感覚がボディスキーマを構成する上でもっとも重要になります。

もしも、固有感覚からの情報が消失すると、我々は全身の運動を認知することが困難となるからです。

自分の身体が動いていることをモニタリングしていることは、「身体の主体が自分であること」を認知する上で非常に重要な事です。

したがって身体図式(内的姿勢モデル)の消失は、自身のアイデンティティーの消失につながるとも言えるでしょう。

この場合、固有感覚からの情報が消失しているため、視覚のみが自身の身体を確認する唯一の手段となり、自分の身体を見ていないと自分の身体の動きを知る術がなくなってしまいます。

そして、視覚情報を用いたトレーニングによって、一見運動機能が回復したとしても固有感覚からの情報を基にした全身のボディスキーマの変化が伴わないため、運動機能が回復したという実感や満足感が湧かない、あるいはスポーツ選手ならパフォーマンスが上がらないといった可能性も起こりえます。

脳の可塑性と学習

脳の可塑性は「学習」により獲得され、「記憶」の生成に欠くことのできない仕組みです。

損なわれた神経系機能もこの可塑性によって補償することができるのかも知れません。

しかし、脳に可塑性があることは決して良いことばかりではないということも言えると思います。

最初に記したように、可塑性の重要な原理は、「同期して活動する神経細胞間に形成される神経回路を繰り返し使用することにより形成される」ことにあります。

しかしながら、エラーがあるままでの神経細胞の活動はある意味「間違った学習」となり、「誤った記憶」として神経回路を形成することにもなってしまいます。

だからこそ、運動学習の際にはまずは実際の体表モデルとボディスキーマをうまく一致させることが重要となります。

自分を外面、内面で知ることができるから、自分をコントロールすることができるとでもいいましょうか、認知の面から考えれば、「自分が自分であることを認知する」ことが運動を制御する上でも大事なことになっていきます。

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